『宇宙際 Teichmüller 理論入門 (Introduction to Inter-universal Teichmüller Theory)』
星 裕一郎. 宇宙際 Teichmüller 理論入門 (Introduction to Inter-universal Teichmüller Theory). 2019. 本稿の構成は, おおまかには以下のようになっています:
$ \text{\S}1 から $ \text{\S}3 : 宇宙際 Teichmuller 理論において遠アーベル幾何学がどのような形で 用いられるか, という点についての説明.
$ \text{\S}4 から $ \text{\S}12 : ある Diophantus 幾何学的帰結 ($ \text{\S}4 の冒頭を参照) を得るために, \何
をすれば良いか", \どのようなアプローチがあり得るか", \そのアプローチの枠組みで何
ができるか" という点についての考察. 特に, 宇宙際 Teichmuller 理論の主定理の大雑把
な形の説明.
$ \text{\S} 13 から $ \text{\S} 20: テータ関数に関わる局所理論やその大域化の説明, 特に, 加法的/幾
何学的な対称性が重要な役割を果たす \加法的 Hodge 劇場" の構成の説明.
$ \text{\S} 21 から $ \text{\S} 25: 数体の復元に関わる理論の説明, 特に, 乗法的/数論的な対称性が重
要な役割を果たす \乗法的 Hodge 劇場" の構成の説明.
$ \text{\S} 26: 最終的な Hodge 劇場の構成の説明.
ref: P3
(セクション番号だけ数式化)
§ 1. 円分物
結論を簡単 に述べてしまいますと, 宇宙際 Teichmu ̈ller 理論において, 遠アーベル幾何学は, “エタール的対象の結び付きによる, 対応する対象の間の関連付け” を実現するために, より大雑把には, “エタール的対象の結び付きによる対象の輸送” を実現するために用いられると言えると思います.
遠アーベル幾何
円分物(cyclotome)はTate捻り$ \hat{Z}(1) (a) (標数0 の) 代数閉体$ Ω に対する$ Λ(Ω) \stackrel{\mathrm{def}}{=} \lim_{\longleftarrow n} \bm{μ}_n(Ω) — ここで,$ n \ge 1 に 対して, $ \bm{μ}_n(Ω) \subseteq Ω は, $ Ω の中の 1 の n 乗根のなす群を表す. (b) (標数0の) 代数閉体$ Ω 上の射影的で滑らかな代数曲線 $ C に対する $ Λ(C) \stackrel{\mathrm{def}}{=} \mathrm{Hom}_{ \widehat{\mathbb{Z}} } H^2_{\text{\'{e}}t}(C, \widehat{\mathbb{Z}}), \widehat{\mathbb{Z}}) — ここで, $ i \ge 0 に対して, $ H^i_{\text{\'{e}}t} は, i次エタールコホモロジー群を表す.
(c) (標数 0 の) 代数閉体$ Ω 上の滑らかな代数曲線 C とその閉点 $ c \in C に対する$ I_c \stackrel{\mathrm{def}}{=} \pi^\text{\'et}_1(\mathrm{Spec}(\mathcal{O}_{C,c} )^{\wedge} )\backslash\{c\} — ここで, $ \pi^\text{\'et}_1 は, エタール基本群を表す. (すなわち, 同型を除けば, $ Ω 係数 1 変数巾級数環の分数体 “$ Ω((t)) ” の絶対 Galois 群.) 標数0とは、体の元を任意回足したときに0にする操作ができないものをいう ============================